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福井事件:特別抗告申立についての弁護団声明(2013.3.12)

再審請求特別抗告申立てについての弁護団声明

 

前川彰司氏(以下,「前川氏」という。)並びに父前川禮三氏は,昨日(2013年[平成25年]3月11日),「福井女子中学生殺人事件」に関する再審請求事件について,名古屋高等裁判所刑事第1部が同年3月6日に下した,名古屋高等裁判所金沢支部の再審開始決定(以下,「開始決定」という。)を取り消し,再審請求を棄却する旨の決定(以下,「本決定」という。)に対して,最高裁判所宛に,特別抗告を申し立てた。

本件については,前川氏が被害者との接点がない,又,アリバイがあるとして,一旦は,容疑対象からはずされた経過があり,それにもかかわらず,1年経過後に,逮捕されるに至ったものの,前川氏は逮捕以来一貫して無罪を主張し,前川氏には殺害の動機がなく,前川氏と被害者との接点を裏付ける証拠や,前川氏が犯人であることを示す証拠もまったくない事件である。「犯行後に血を付けた前川氏を見た。」とする暴力団員とその関係者の供述のみが裏付とされているが,関係者の供述は,取調べにおいて強引な誘導が行われた結果,著しい変遷や矛盾点を含んだもので到底信用できるものではなく,証拠構造は極めて脆弱である。

請求審名古屋高等裁判所金沢支部は,真相を解明すべく,証拠開示に積極的に取り組み,2人の法医学者に対する証人尋問を含め,6年8か月にわたる,慎重かつ充実した審理を行った。

その結果を受けて,名古屋高等裁判所金沢支部は,2011年(平成23年)11月30日,本件の脆弱な証拠構造を的確に評価し,そのうえで,再審請求審において開示された証拠と法医学鑑定,さらに法医学者に対する証人尋問結果を踏まえて,犯行現場に遺留されていない刃器が使用された蓋然性を認め,そのことを含めてそもそも犯人像があまりにかけ離れている,さらに,血だらけの前川氏が乗り降りを繰り返したはずの車に,事件の1年以上前の他人の血痕が明瞭な状態で残存している反面,被害者の血液に関しては血液反応がないのは不自然と判断した。

そして,確定判決が有罪認定の根拠とした関係者の供述の信用性を全面的に否定し,前川氏が犯人であるとする確定判決に合理的疑いが生じたとして再審開始決定をなしたものであり,それは,白鳥・財田川決定をはじめとする最高裁判例に忠実に則った正当な判断であった。

異議審では,検察官から弁護人の意見に対して十分な反論がなされず,開始決定を覆す余地は全くなかった。

ところが,本決定は,不当にも開始決定を覆した。

本決定の判示をみると,凄惨な犯行にもかかわらず犯人に結び付く客観的証拠が採取されていないという本件の特徴を的確に考慮せず,一見して脆弱な証拠構造に目を瞑っている。その一方で新証拠に過大な証明力を要求しているが,これは近年の最高裁判例の考え方に反するものである。さらに,各争点に対する具体的判断においても,検察側と弁護側の双方の法医学者の証言が一致した専門的知見さえも無視するなど,各証拠をつぶさに精査さえすれば,異議審の杜撰な審理内容が明らかとなり,誤った判断であることが誰の目にも明らかとなるはずのものである。

これらの誤りを含んだ本決定が,経験則・論理則に違反し,「疑わしいときは被告人の利益に」とする刑事裁判の鉄則が再審請求にも妥当するとした白鳥・財田川決定,及び,この鉄則の理解,適用に関する最高裁判例に反し,著しく正義に反することは明白である。

弁護団は,原決定が,最高裁判所において,必ず取り消されるものと確信している。

本件が冤罪であることは明らかであり,前川氏が濡れ衣を着せられてからすでに約26年の歳月が経過している。

服役の後遺症に悩みつつ一貫して無罪を訴える前川氏と,80才を迎えてもなお前川氏の冤罪を晴らすべく懸命に努力を続ける父禮三氏を思えば,一刻も早く再審公判が開かれなければならず,今回の不当決定に屈することはあり得ない。

よって,当弁護団は,特別抗告の申立にあたり,前川氏の無罪を勝ち取るために,さらに全力を尽くす決意であることをここに改めて表明する。

2013年(平成25年)3月12日

再審福井女子中学生殺人事件弁護団

団長 小 島  峰 雄