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特別抗告棄却決定について 布川事件弁護団 

最高裁特別抗告棄却決定について

                                       2010年1月7日   布川事件弁護団

 平成21年12月14日、最高裁判所第二小法廷は、東京高等検察庁検事長が平成20年7月22日に申し立てた特別抗告を棄却する決定(以下「布川決定」といいます。)を出しました。これにより櫻井昌司氏及び杉山卓男氏に対する強盗殺人事件の再審公判が開始されることが確定しました。布川決定は、極めて簡略なものですから、平成20年7月14日の東京高裁決定(以下「原決定」といいます。)及び検察官の特別抗告の各要旨を記載して、何が争点になっていたか及び布川決定の意義を解説します。なお、櫻井氏らは、もはや「再審請求人」ではありませんが、便宜上請求人と表示します。また、月日のみを表示している場合は昭和42年のことです。

目次

   1 確定判決の証拠構造

  2 原決定の要旨 

  3 検察官の特別抗告の要旨

  4 布川決定の内容

  5 布川決定の意義

    6 補足意見について

 

1 確定判決の証拠構造

    平成17年9月21日の水戸地裁土浦支部決定(以下「原々決定」といいます。)及び原決定は、確定判決の有罪認定の根拠を次のように理解しています。この点は検察官も異論を唱えていません。

 (1)証拠構造1

        犯行に接着した時間帯と場所で請求人らを目撃したW、I、K、A、E及びTの供述は、犯行自体を目撃したものではないが、いずれも信用できる内容をもつもので、自白を離れた情況証拠であり、かつ自白の真実性を担保する補強証拠である。

 (2)証拠構造2

        請求人らの自白は、任意になされたものであり、かつ、真実性があり、相互に補強しあっている。

 

2 原決定の要旨 

 (1)証拠の新規性について

        原々決定は、証拠の新規性について、「証拠の未判断資料性(裁判所の実質的な証拠価値の判断を経ていない証拠であるということ)」を意味すると解していますが、原決定はこれを正当であるとしています。

 (2)証拠の明白性について

        原々決定は、証拠の明白性について、最高裁昭和50年5月20日決定(以下「白鳥決定」といいます。)及び最高裁昭和51年10月12日決定(以下「財田川決定」といいます。)を引用して、「確定判決における事実認定につき合理的な疑いをいだかせ、その認定を覆すに足りる蓋然性のある証拠をいう」と定義しましたが、原決定はこの定義を当然の前提として、原々決定が明白性を認めた新証拠の証拠価値を下記のとおり再検討しています。

 (3)原決定が証拠構造の動揺を認めた新証拠

      弁護団は、原々審及び原審を通じて合計141点の新証拠を提出しました。原決定は、次の新証拠が証拠構造1,2を動揺させると判断しています。

   ア 証拠構造1に関する新証拠

       ① 新証拠72~74

           いずれもO母の供述調書で、事件発生以来37年ぶりに開示された証拠です。O母は、Wが被害者方前をバイクで通過した時間と同じ時間帯に同じ場所を自転車で通過し、2人の男性を目撃したと供述しています。O母は、杉山氏と面識がありましたが、杉山氏を目撃したとは言わず、目撃した人物の特徴も杉山氏とは違っていました。なお、第1次再審において、O母と同様な条件で目撃したO子の供述調書が開示され、O子もO母と同じ供述をしていました。しかも、O親子は、事件発生直後に被害者方前の目撃状況を警察に申告していました。O親子の供述は、請求人らを目撃したというWの供述の信用性に重大な疑問を提起しています。

       ② 新証拠88

           Iの有元検事に対する検察官調書です。この調書も37年ぶりに開示された証拠です。Iは、利根川栄橋石段で櫻井氏を目撃した日が8月28日かはっきりしないと公判で証言しました。そのため、確定1審は、8月28日であると明言していた吉田検事に対する検察官調書を2号書面として採用しました。ところが、Iは、吉田検事に供述する前に、有元検事に対し、8月28日かはっきりしないと供述していることが判明しました。これにより、2号書面の信用性が大きく減殺されることになりました。

      イ 証拠構造2に関する新証拠

        ① 新証拠14,49,50,53,56~58,61

            木村康千葉大学名誉教授の意見書、口詰めパンツ、首巻きパンツ、解剖に当たった秦医師の死体検案書などです。請求人らの自白では、まず被害者の口にパンツを詰め、次いで首を手で扼したとなっており、確定判決もそのとおり認定しています。

            原決定は、殺害方法に関する木村意見書の評価については原々決定とやや意見を異にしていますが、同決定と同様に、絞頸行為が行われたことは優に推認され、被害者が頸部圧迫行為により意識を喪失した後にパンツが口に挿入されたと認定しています。そして、上記新証拠は、殺害行為の方法及び順序という自白の枢要部分において、これと矛盾する請求人らの自白の信用性に動揺を与えているとしています。

        ② 新証拠64

            元栃木県警鑑識課員であった斎藤保氏作成の報告書です。被害者の部屋の机及びロッカー周辺を撮影した検証調書添付の写真を拡大して、机上の財布の上に、石けん箱などが置かれている状況及びロッカーに掛け布団が密着し、その上に封筒や硬貨が微妙なバランスでのっている状況が明らかにされています。

            原決定は、この新証拠から石けん箱などに言及していない櫻井氏の物色自白は不自然であり、またロッカーの物色順序に関する同氏の自白の信用性に疑問が生じるとしています。

        ③ 新証拠9,10,59,60,82~84

            直井英雄東京理科大学教授ほか1名作成のガラス戸の破損に関する鑑定書などです。請求人らの自白では、杉山氏がガラス戸の下部の腰板を足で蹴ったときに上2枚のガラスが割れたとなっています。なお、ガラス戸の枠のほぞと上框も破損していましたが、これについては自白ではまったく言及されていませんでした。

            上記新証拠は、足で蹴っただけではガラスが割れたり、ほぞと框の破損は生じないという内容のものです。原決定は、これらの新証拠の証拠価値を認め、請求人らの自白が客観的事実に反している可能性を示しているとしています。

        ④ 新証拠62,63

            死体付近から採取された8本の人毛の鑑定書です。これも証拠開示されたものです。8本の人毛のうち1本は人陰毛で被害者の陰毛に類似すると判定されています。7本の人頭毛のうち2本は、被害者のもの1本及びそれに類似するもの1本と判定されています。そして、残る5本の人頭毛は、被害者のものでも請求人らのものでもないと判定されています。原決定は、請求人ら以外の人物が犯人である可能性を示すとともに、請求人らの自白の信用性に疑問を提起するものであるとしています。

        ⑤ 新証拠100,101

            櫻井氏の10月17日付け録音テープとその反訳書です。櫻井氏は確定1審のときからこのテープの存在を指摘していましたが、ようやく開示されました。音響専門家の中田宏氏の鑑定書(新証拠109)によると、このテープには13か所の編集痕が認められます。原決定は、櫻井の供述経過の判断、ひいては櫻井供述の信用性の判断に影響を及ぼすとしています。

  (4)新旧証拠の総合評価

        原決定は、上記のとおり新証拠が証拠構造1,2に動揺を与えることを確認したうえで、次いで確定判決における事実認定について合理的な疑いが生じるか否かを新旧証拠を総合評価して詳細に検討し、再審を開始した原々決定を正当としています。なお、この検討にあたっては、確定審及び第1次再審に提出された証拠のほかに、今次再審請求審で提出された証拠も検討に加えています。

        ところで、原決定は、W以外の5人の目撃供述について、目撃場所が請求人らの日常的な行動圏内であるから、そこで目撃されたからといって本件犯行と結びつけるのは相当でないという理由をあげて情況証拠としての価値を否定しています。

 

3 検察官の特別抗告の要旨

    検察官は、新証拠の新規性及び明白性に関する判例違反と著しく正義に反する重大な事実誤認を主張しましたが、後者は前者と実質的には重複している部分も多く、ここでは割愛します。

 (1)証拠の新規性に関する判例違反について  

    検察官は、最高裁昭和29年10月19日決定及び東京高裁昭和46年7月27日決定を引用して、確定判決前に当該証拠が存在したのみならず、これを被告人のために有利な証拠として利用することが十分可能な状況にあった場合には、新規性を欠くと主張しました。検察官が具体的に問題としているのは新証拠64です。

 (2)証拠の明白性に関する判例違反について 

    検察官は、白鳥決定、財田川決定及び最高裁平成9年1月28日決定(以下「名張第5次決定」といいます。)を引用して、下記事項(命題)が「判例」になっていると主張しています。また、特別抗告理由補充書で福岡高裁宮崎支部平成16年12月9日決定(以下「大崎決定」といいます。最高裁平成18年1月30日決定)及び仙台高裁平成7年5月10日決定(以下「日産サニー決定」といいます。最高裁平成11年3月9日決定)を追加して引用しています。( )内は、当該事件の請求人の特別抗告を棄却した最高裁決定です。

   ① 立証命題との関係で証拠価値が乏しいため「確定判決の事実認定を覆すに足りる蓋然性」がないことが明らかな証拠は、新証拠として旧証拠との総合評価を行う余地がない。

      ② 旧証拠との総合評価が認められる場合においても、特段の事情が認められない限り、新証拠の立証命題と無関係に旧証拠を洗いざらい評価し直して自らの心証を形成し、確定判決の動揺を審査すべきではない。

      ③ 特段の事情とは、確定判決の証拠構造が脆弱な場合などをいうと解されるが、本件はそれに当たらない。

        検察官は、以上の一般論を述べたうえで、原決定が証拠構造の動揺を認めた上記新証拠を取り上げ、上記①または②のいずれかに該当すると主張しています。また、確定審及び第1次再審の判示を引用して、本件確定判決の証拠構造が脆弱な場合には当たらないことを強調しています。そして、原決定は、新証拠の立証命題と無関係に旧証拠を洗いざらい評価し直して自らの心証を形成していると非難しています。

 

4 布川決定の内容

    布川決定は極めて簡略で次の3点に尽きています。

 (1)証拠の新規性に関する判例違反の主張は事案を異にする判例を引用するもので、本件に適切ではない。

 (2)その余は、判例違反をいう点も含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、いずれも刑訴法433条の抗告理由にあたらない。

 (3)所論引用の証拠の新規性及び明白性を認めて本件各再審請求をいずれも認容すべきものとした原々決定を正当とした原判断に誤りがあるとは認められない。

    なお、古田佑紀裁判官の補足意見が付されていますが、これについては後で検討します。

 

5 布川決定の意義

  (1)免田決定との類似性

        免田事件の第6次再審請求において、熊本地裁八代支部が請求棄却の決定を出したのに対し、福岡高裁はこれを取り消して再審開始決定を出しました。福岡高等検察庁検事長が昭和54年10月2日に特別抗告を申し立てたのに対し、最高裁第一小法廷は、昭和55年12月11日に抗告を棄却しました。

        布川決定は、証拠の新規性に関する判例違反の主張に対する判断及び古田裁判官の補足意見が付されていますが、それ以外は免田決定の決定内容とほとんど同じです。

        免田決定を解説している稲田輝明調査官は、「白鳥決定及び財田川決定の判示する判断基準及び判断方法を具体的証拠にあてはめて、証拠の明白性を肯定した事例判例である。」と述べています。布川決定の意義を検討するにあたっては免田決定が参考になります。

 (2)証拠の新規性について

        検察官が引用する最高裁昭和29年10月19日決定は、「証拠があることを知りながら且つこれを提出することができたのに、他人の罪を背負うためにことさらこれを提出しないで判決確定後再審の請求をするに際し始めてこれを主張し提出した」ことを理由に新規性を否定した原決定を是認しています。この決定は、決定文から明らかなとおり身代わり犯人のケースです。これについては最高裁昭和45年6月19日判決が再審事由になりうることを認めていますので、弁護団は、上記決定は、先例的価値を失っていると主張しました。

    次に、東京高裁昭和46年7月27日決定は、弁護人が検察官請求の供述調書を不同意にしたため、供述者について確定1,2審で証人尋問がなされ、判決確定後に別の弁護人が供述経過を立証するために不同意にした供述調書を証拠として提出したケースです。上記決定は、確定審で当該証拠を利用することが十分可能な状況であったことを理由に新規性を否定しています。弁護団は、「証拠の未判断資料性」と解するのが多数説になりつつある(高松高裁平成5年11月1日決定、福岡高裁平成12年2月29日決定など)なかで、上記東京高裁決定を確定した先例と見るべきではないと主張しました。さらに、新証拠64は、確定審段階では誰も気づかなかった論点であるから、「利用することが十分可能な状況」にはなかったとも主張しました。

        布川決定で、新規性の意義を「裁判所にとって未判断の資料であれば良い」と解し、新証拠64のような場合も含め本件各新証拠の新規性を認めた原々決定及び原決定の判断を、最高裁がそのまま支持した意義は、極めて大きい。

  (3)証拠の明白性について

        白鳥決定を解説した田崎文夫調査官は、「新証拠の重要性、その立証命題と無関係に、再審裁判所が旧証拠をあらいざらい評価し直して自ら心証を形成し、確定判決の動揺の有無を審査することを認めた趣旨ではなかろう。」と論じ、「要は、新証拠の持つ重要性とその立証命題であり、それが有機的に関連する確定判決の証拠判断及びその結果の事実認定にどのような影響を及ぼすかを審査すべきである。」と述べています。その後の調査官解説でもたびたび引用されており、裁判実務に影響を与えていることは否めません。後に限定的再評価説と呼ばれるようになった考え方です。検察官の主張は、限定的再評価説に依拠していることは明らかです。

    しかし、白鳥決定及び財田川決定は、「もし当の証拠が確定判決を下した裁判所の審理中に提出されていたとするならば、はたしてその確定判決においてされたような事実認定に到達したであろうかどうかという観点から、当の証拠と他の全証拠とを総合的に評価すべきであり」と判示するのみで、新証拠の重要性はもとより、総合評価の範囲を新証拠の立証命題に関連する範囲に限定するような表現はとっていません。また、名張第5次決定も「再審請求後に提出された新証拠と確定判決の言い渡された第2審で取り調べられたその余の全証拠とを総合的に評価した結果として、確定判決の有罪認定につき合理的な疑いを生じさせ得るか否かに帰着するということができる。」と判示するのみで、新証拠の重要性や立証命題云々の表現はありません。弁護団は、この点を強調して検察官の主張は失当であると反論しました。

        また、財田川決定は、新証拠(高村鑑定)の検討に先立ち、確定判決の有罪認定とその対応証拠(旧証拠)の関係を詳細に検討し、申立人の自白に「重大な、しかも、たやすく強盗殺人の事実を認定するにつき妨げとなるような疑点がある」ことを理由に再審請求棄却決定を取り消して地裁に差し戻しています。旧証拠の全面的再評価を認める説は財田川決定を拠り所にしてきました。なお、検察官も財田川決定を意識して、証拠構造が脆弱な場合には新証拠の立証命題の制約が外れることを認めるようです。

    なお、日産サニー決定は、まず旧証拠を再評価してこれに新証拠を加えて検討した原決定の判断方法自体は確定審の心証にみだりに介入するものではないと判示しており、検察官の主張を裏付ける裁判例ではありません。

        弁護団は、有罪の根拠となった旧証拠を分析して、その証拠価値が薄弱であること(証拠構造の脆弱性)を主張する一方で、裁判実務の厳しい現実を直視して、旧証拠を弾劾する新証拠を数多く提出することに努力してきました。

        原々決定及び原決定ともに新証拠の証拠価値を検討し、証拠構造に対する動揺の発生を確認した上で、新旧証拠を総合的に検討して、確定判決の事実認定につき合理的な疑いが生じるか否かを判断しています。そして、両決定ともに確定判決の事実認定に合理的疑いが生じるか否かの検討にあたっては、旧証拠の全面的再評価を行いながら、新旧証拠の総合評価をしていることは間違いありません。また、両決定ともに、大崎決定のように確定判決の立場で旧証拠を評価し(心証引継ぎ)、新証拠の証拠価値を非常に厳しく評価する態度はとっていません。

        検察官の前記のような新証拠の「明白性」解釈は、再審の扉を白鳥決定前の状態に戻しかねないものですが、布川決定で最高裁が、この解釈を支持することなく、旧証拠の全面的再評価を行い、新旧証拠の総合評価をして合理的疑いを認めた原々決定及び原決定の判断を維持したことの意義は、極めて大きいと言えます。

  (4)まとめ

        確定3審(最高裁)決定は、31丁に及ぶ長文の上告棄却決定でした。この決定がその後の再審請求にとてつもなく大きな障害として立ちはだかってきました。布川決定は、最高裁自らが上告棄却決定の誤りを公式に認めたことを意味します。確定3審決定の呪縛から解放され、請求人らが再審公判で無罪を勝ち取るために大きなハードルを一つ乗り越えたことになります。これが請求人らにとっての布川決定の意義と言えます。

        さらに、他の再審請求事件に及ぼす影響ですが、稲田調査官は、免田決定について、「本決定は、結局、事例判例に留まるが、原判文を参照すれば、本件事案は、提出された新証拠が必ずしもそれ自体で確定判決の有罪認定に決定的影響を及ぼすような重みを持つものではないが、旧証拠と総合評価することによって確定判決の有罪認定に影響を及ぼすものである場合に証拠の明白性を認めた事例であることが明らかであり、総合評価説を打ち出した白鳥決定、財田川決定の具体的適用を示した点で重要な先例的価値があるといえよう。」と述べています。

    多くの再審請求事件は、それ自体で確定判決の有罪認定を覆してしまう決定的な新証拠が得られない中で、新証拠と旧証拠の総合評価による再審開始を求めて努力しているのが現状かと思われます。最高裁が、免田決定以来29年ぶりに、白鳥決定及び財田川決定が確立した総合評価説によって再審開始決定を承認したことは、誤判救済を求める人々に希望を与えることになると思われます。

 

6 補足意見について

    本決定には、古田裁判官の「法廷意見に同調するものであるが、原決定は、旧証拠に関し、新証拠と離れて、まず自らがその信用性を改めて評価しているように解される余地があるなど、その説示には必ずしも首肯し難い点があることを付言しておきたい。」という補足意見が付されています。

    有斐閣『法律用語辞典』第3版1266頁の「法廷意見」を引くと、「最高裁判所の裁判書において、「補足意見」のみが付されている場合に、全員一致の意見は「法廷意見」と呼称、表記される。これに対し、「反対意見」(結論、理由ともに反対のもの)又は「意見」(結論は同じであるが理由付けが異なるもの)が付されている場合に、多数を形成した意見に「多数意見」と呼称、表記されている。」と解説されています。

    古田裁判官は、検察官出身ですが、前述のとおり結論、理由ともに全員一致の法廷意見に同調しています。また、補足意見の内容も極めて簡潔で、原決定が「旧証拠に関し、新証拠と離れて、まず自らがその信用性を改めて評価し」た部分を具体的に指摘しているわけでもありません。原決定は、新証拠との総合評価の中で、旧証拠の信用性を評価しているのであり、古田裁判官以外の裁判官がいずれも補足意見に同調せず、原決定の手法を是認したことのほうがむしろ重要と言えます。

  また逆に、そうした補足意見を述べる検察官出身の裁判官ですら、確定判決の結論に対し合理的疑いを抱かざるを得なかった事実は、それだけで再審公判における事実認定に指針を与えるものと言えるでしょう。

                                                             以 上