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布川事件:第1回再審公判(10.7.9)報告

布川事件:第1回再審公判(10.7.9)報告

                                        2010年7月20日 布川事件弁護団

 

第1    再審開始決定後の動き

1,2009.12.14 最高裁特別抗告棄却決定(再審開始決定の確定)(このサイトの同決定参照)

2,第1回三者(進行)協議(裁判所、検察官、弁護人・請求人)(2010.3.19、このサイトの4月1日付報告参照)

この協議において、検察官は、再審公判の中で有罪の立証を図っていくことを明言し、被害者宅で発見された被害者の口腔内に挿入されていたパンツ、首に巻かれていたパンツについて、DNA型鑑定を行いたいとしました。

その後、検察官は5月21日付でDNA型鑑定請求をしてきました。被害者の足首に巻かれていたワイシャツやタオルについても、犯人の掌の皮膚片等が存在する可能性があるとして鑑定対象物として追加しました。

3,      第2回三者(進行)協議(2010.6.11)

(1)裁判所に弁護団意見書提出(2010.6.4.)

弁護団は、「これらの鑑定請求を採用することは許されない」との意見書を提出しました。この意見書では、

①  謝罪もしない検察官に新たに有罪立証をする資格はない。

②  二重の危険の禁止の見地に基づき、さらに、再審開始決定が尊重されるべきことや再審請求審で検察官が特段の立証をしてこなかったこと等を考えると、新たな有罪立証は制限されるべきである。

③  パンツやワイシャツなどの鑑定資料の取り扱い方法や保管方法が不適切で、43年の間に汚染されている可能性が高く、鑑定の条件を欠いている。

④  これらの鑑定資料は、取調べを行った時に櫻井さんに示されており、その際に櫻井さんの唾液や、皮膚片が付いた可能性を否定しがたい。さらに、最高裁による特別抗告棄却決定後の平成22年2月4日から3月16日に至る間、検察官はこれらの鑑定資料を、事情を説明することなく裁判所から借り出し、40日以上もの間独自に管理下においたことに鑑みると、あらたな冤罪を招く危険がある。

などを指摘し、鑑定請求を採用することに断固反対する旨述べました。

(2)第2回三者(進行)協議が行われる(2010.6.11.)

再審請求審で、検察官・弁護人が提出した証拠にかかる証拠調べ請求について協議をしました。取調べ請求予定の証拠とこれに対する同意・不同意の対応についての協議です。

これまでの申入れの成果として、弁護人請求の大半の証拠については、検察官に同意させることができましたが、検察官が開示した、犯行現場である被害者宅付近で男を目撃したという人物の供述調書(検面調書、員面調書)等について、検察官は不同意である旨回答しました。

そこで弁護団は、捜査官が自ら録取・作成した供述調書になぜ同意しないのか追求しましたが、検察官は、確定審においても証人尋問が為されていないので、是非尋問(反対尋問)をしたいとのことでした。

弁護団は、最終的には証人尋問をしても不利益が生じることはないことから、証人請求する方向で検討することにしました。

また、検察官のDNA型鑑定請求について協議をしました。弁護人の意見は先の意見書のとおりですが、裁判所も弁護人の提起した問題点について一定の理解を示し、検察官に汚染の可能性がないことの客観的な立証をするよう求めました。

第1回再審公判を7月9日に行うことが決まりました。

(3) なお、この間、弁護人は検察官との間で、証拠調べ請求にかかる折衝を2回  行いました。

4, 再審公判に先立つDNA型鑑定をめぐる攻防

(1)検察官「DNA型鑑定請求にかかる理由補充書」を提出(2010.6.18)

検察官は先の請求書の内容を敷行しつつ、弁護人の批判について、鑑定資料に櫻井さん、杉山さんの唾液等が付着する可能性はなく、犯人が握った箇所のみからDNA型が検出されればそれは犯人がその際に皮膚細胞を付着させたことにほかならない、また杉山さんは取調べの際鑑定資料を示されていないので、汚染の可能性はないなどと反論しました。

(2)弁護団再反論の意見書(2)を提出(2010.7.6.)

弁護人は、

① 反省なき検察官に新規立証の資格はない、

② 再審公判において検察官の新規立証は許されない、時機に後れた攻撃防禦方法である、

③ 鑑定は事案解明に役立たない(検察官の請求はDNA型鑑定の前提条件を満たしていない、鑑定資料に破壊・分解の進行が考えられる、鑑定資料の汚染の可能性が指摘できる、鑑定部位の特定ができない、再鑑定の保証がない等)、

④ 検察官の補充書の主張や提出された資料によっても、犯行時以外(取調べ時、鑑定資料の保管時及び不明朗な40日以上の貸出時の汚染の可能性)に櫻井さん、杉山さんのDNAが付着した可能性を排除できない、

⑤ 過去の捜査・公判活動に甚だしい違法行為のあったこの件では上記の点で厳格な立証の責任があるが、到底その責めを果たしたとは言えないこと、

等を詳細に述べ、再び断固反対であると述べました。

第2 第1回再審公判(2010.7.9) 

1,このような事前のやり取りを経て、7月9日午後1時30分、いよいよ第1回再審公判が開催されました。600数十名の傍聴希望者の中、多くのマスコミ関係者、20数名の傍聴人とともに、櫻井さん・杉山さんの奥さんが特別傍聴人として傍聴する中、弁護人は総勢23名が土浦支部の狭い法廷の中にぎゅうぎゅう詰めで着席し、長らく待ち望んでいた審理が始まりました。以下、時間の経過に従い報告をいたします。

 

(1)冒頭手続として、人定質問がなされました。次いで、確定審の証拠は更新手続に準じて職権により取調べる意向が裁判所から示され、検察官・弁護人双方了承しました。そして、強盗殺人事件について審理することとし、その他の被告事件については、実質的な審理はしないことになりました。

(2)続いて、検察官が昭和42年12月28日付起訴状をそのまま朗読しました。裁判所が両名に黙秘権を告知し、公訴事実に対する意見を求めました。

櫻井さんは予め準備していた意見書を元に、まず無実であることを述べ、その後、43年前の起訴状をそのまま朗読されたことに怒りを表し、途中から、検察官に対し「あんな起訴状の朗読をして恥ずかしくないのか、証拠を独り占めして隠したり出したり、そんなことが許されるのか、隠している証拠を見れば無実がわかるはずだ。」との趣旨の発言をしました。

続いて杉山さんが意見書を朗読し、櫻井さん同様、無実であることを述べました。そして、「自白をしてしまったことを43年の間、悔やんでも悔やみ切れないものがある、子どもが六年生になった、人殺しの子どもという身分なので、そのレッテルを一日も早く外してやりたい。」と述べました。

(3)続いて、弁護人が次のような意見を述べました。内容は、

①櫻井さん、杉山さんは無罪であること、

②違法な捜査や証拠隠しについて検察官は反省をして謝罪の弁を述べること

③本再審公判の使命は、

第1に、一刻も早く二人に無罪を宣告することであり、再審開始決定を尊重すべきで、新たな有罪立証は許されないこと、

第2に、確定審が誤判に陥った原因の検証をすべきであること

④これに反し、検察官が目撃証人の供述書の取調べやDNA型鑑定請求をめぐり、再審公判の円滑な進行を妨害していることを強く批判し、

⑤検察官に対しては全ての証拠への同意と、鑑定請求の撤回を求め、

⑥裁判所に対しては、目撃証人の調書を採用し、鑑定請求を却下するよう求めました。また、強盗殺人事件以外の被告事件については、免訴判決が言い渡されるべきであることを求めました。

(4)検察官は謝罪をしませんでした。

(5)以上の意見を基に証拠調べ手続に入りました。

①検察官は冒頭陳述を「従前のとおり」と述べ、弁護人はあらたに冒頭陳述をしました。

②次いで、検察官は150点余の証拠について、弁護人は170点余の証拠について要旨の告知をしました。

③弁護人の取調べ請求証拠は、再審請求審において新証拠として提出していたものが中心です。

④検察官は上記目撃者の供述調書や関連する捜査官作成の「メモ」を除きすべて同意しましたので、要旨の告知が可能な証拠の取調べが終了しました。自白の任意性関係、目撃証言関係、自白の信用性関係(殺害行為関係、物色行為関係、ガラス戸偽装工作関係)、アリバイ関係にかかるものです。

⑤またDNA型鑑定請求の資料であるパンツやワイシャツ、タオルその他の証拠物については、検察官が証人席または検察官前卓上に展示する形で櫻井さん・杉山さんに示しました。

(6)弁護人が取調べ請求をした証拠には、上にあげた証拠の他、録音テープ、ビデオテープ、DVD等の音声または映像にかかるものがあるので、これらについては、第1回公判では証拠調べを実施せず、第2回公判期日(7月30日)にまとめて証拠調べをすることになりました。

(7)以上の手続が終了した後、目撃証人及び供述証書の採用、DNA型鑑定請求の採否の問題で応酬がありました。

①目撃証人については、弁護人は証人請求をする一方(検察官の意見は「しかるべく」)、引き続き供述調書の採用を求めていくこととしました。

②また、関連する捜査官作成のメモを検察官が不同意としたため、弁護人はその捜査官の証人尋問を請求しましたが、検察官は尋問事項を見た上で検討をすることになり、目撃者と捜査官の両名については、当日採用までには至りませんでした。

③更にDNA型鑑定請求について、裁判官から双方に対し、これ以上の疎明資料の追加がないかどうか確認がありました。

検察官が「ないとは言えない」というので、検察官はできるだけ早く検討を加え、あるならば速やかに提出することになりました。

弁護人はDNA型鑑定請求が許されないことを繰り返し主張しました。

DNA型鑑定請求にかかる裁判所の判断は、第2回公判期日以降になされることになりました。

(8)検察官は7月16日に至り、前記のDNA型鑑定請求の補充疎明資料はないと裁判所に回答しました。

2,次回公判は7月30日午後1時30分 

最後に第2回期日が7月30日午後1時30分から、第3回期日が9月10日午後1時30分からと指定され、閉廷しました。

なお、その際、裁判所の要請で、弁護人が証拠調べ請求をしていた櫻井さんの獄中日記16冊の原本を次回の公判まで裁判所に預けることになりました。その肉筆を通じて、冤罪に苦しむ櫻井さんの思いが少しでも伝わればと思います。

第3 弁護団の決意―早期結審・無罪判決獲得へ総力を傾注

以上のように、布川事件は2回にわたる進行協議を経て、またDNA型鑑定請求にかかる検察官・弁護人間の厳しい応酬を経て、第1回再審公判にたどりつきました。

弁護団は、検察官がこの期に及んであらたな有罪立証をすることは許されないと考えており、DNA型鑑定請求の採用がなされないように、裁判所に強く働きかけ、早期審理、早期判決をさらに求めていきます。こうした姿勢は、弁護団の2月15日付検察官に対する申入書、3月17日付裁判所に対する進行等に関する意見書の中で繰り返し述べていたもので、弁護団の一貫した姿勢であり要請です。

鑑定請求が却下されますと、証人尋問、被告人質問に1期日を、論告・弁論に1期日を要するとして、早ければ10月には結審になる可能性もあります。弁護人は早期無罪判決を獲得できるよう、総力をもって最大限の努力を傾注していきます。