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布川事件弁護団の報告:再審公判へ向けて(10.4.1)

1,        再審開始確定・・・最高裁の特別抗告棄却

最高裁は、2009年(平成21年)12月14日、櫻井昌司さん、杉山卓男さんの再審請求について、「再審請求を認容すべきものとした原々決定を正当とした原判断に誤りがあるとは認められない」として、検察官の特別抗告を棄却し、これにより再審開始決定が確定しました。

第2次再審請求の申立をしてから8年余の月日が経過しましたが、原々決定、原決定は、確定判決が誤った判断をするに至った要因を明らかにし、重要な指摘をし、最高裁決定はこれらの指摘を支持したのです。

弁護団は、検察官にこれらの指摘を真摯に受け止めさせ、42年余に亘る強盗殺人犯の汚名を着せられた二人が一日も早く雪冤の日を迎えることのできるよう最大限の努力をし、裁判所、検察官にその実現のために協力を求めていきます。

そのような再審公判を実現すべく、以下のように準備が進んでいることをご報告します。

 

2,        水戸地方検察庁に対する申し入れ

弁護団は去る2月15日に水戸地方検察庁に赴き、再審公判にあたって検察官に要請をなし、同時に申入書を提出しました。

要請事項の第1は、検察官が謝罪をすることです。原々決定、原決定が指摘したように、警察官及び検察官の違法・不正な捜査活動、公判活動が、確定審の裁判所の判断を誤らせ、二人に42年余に及ぶ苦難を強いたのであり、こうした原因を作った検察官は真摯に謝罪すべきであると求めました。

第2は、杉山卓男さんの昭和42年11月2日以前に録音されたテープその他重要目撃者の供述証拠、捜査報告書等計7点の開示の要求です。これら証拠は、本件の違法捜査の実態を明らかにするものであり、二人の無罪を一層明らかにする証拠であると考えられるからです。

第3は、迅速な審理への全面的協力です。再審請求審8年余もかけて十分な審理が行われており、無罪を言い渡すべき明らかな証拠があることはすでに決着済みと言ってもよく、これ以上検察官が有罪方向での証拠調べ請求をする必要もないと考えるべきだからです。弁護団はこのような申し入れを検察官になし、3月5日までに回答をするよう求めました。

 

3,        内容のなかった検察官の事前回答

弁護団の上記申し入れに対し、検察官は、3月5日に弁護団に対し、「申入書記載の検察官に対する申し入れ事項については、平成22年3月19日の三者打ち合わせの席で、対応をしたいと考えています」という一文をファックス送付してきました。これは、謝罪をするか否かも含めて、すべて3月19日の三者協議の場で対応をするというだけのもので、何ら内容はなく、事実上の回答留保で、弁護団は実に遺憾な思いを持たざるを得ませんでした。

 

4,        再審公判進行に関する三者協議へ向けた申入書

弁護団は3月19日の三者協議に臨むにあたり、事前に裁判所、検察官に申入書を送付しました。

裁判所に申し入れた事項は、第1に、検察官に謝罪するよう求めたことです。検察官が、誤判に至った原因を真摯に反省し、被害者である両名に謝罪をすることは、再審公判において訴訟活動を行うにあたっての当然の前提であるということを裁判所に理解して貰うためでした。

そして第2に、殺人事件及びこれ以外の公訴事実に対する意見を述べました。強盗殺人以外の公訴事実については実体審理に入らず免訴判決を言い渡すべきこと等を強く求めました。

第3に進行に関する意見として、再審公判での審理と確定審の審理との関係は更新に準じて進められるべきであることを述べ、強盗殺人については再審開始決定に拘束力が生じることを申し入れました。

 

5,第1回進行協議期日開催

3月19日午後3時、水戸地裁土浦支部で、裁判所、検察官、弁護団の三者による進行協議が開催されました。櫻井昌司さん、杉山卓男さんの同席も認められましたが、裁判所からは、二人の発言は遠慮して欲しいとの要請があり、二人は発言をしたいと考えていたものの、裁判所の要請を受け対応をすることにしました。

協議は土浦支部庁舎の2階の会議室で行われ、裁判官は3名、検察官は2名、弁護人は16名出席しました。以下、リアルタイム式に説明しましょう。

 

ア 謝罪要請

弁護団は事前に、検察官に対し謝罪を要請しており、検察官は三者協議の場で回答について対応をすると約束をしていたことから、進行協議に先立ち、検察官に回答を求めました。

しかし裁判所は進行に必要な限りで協議を進めたいとして、弁護団の要請を受け入れようとせず進行をしようとしました。弁護団は、布川事件は,証拠隠しや偽証,証拠の改竄など多数の問題を抱える事件であり、こうした問題について検察官がどのように考えているかを明らかにする必要があること、ひいては検察官が公判を維持する資格があるかにかかわる問題でもあるとして回答を求めました。かようなやり取りがなされた結果、裁判所は検察官に回答を求めました。

検察官の回答は、謝罪をするか否かは,どう公判に臨むかにかかわる問題である、検察官としては有罪立証をするという方針で臨むというものでした。

弁護団はこの検察官の回答は誠に遺憾である、報道機関に対してもそのように述べることになろうと、強い不満の意を表明しました。しかし、謝罪がないことをもって、進行協議を拒否する態度は取りませんでした。

 

イ 免訴判決に対する裁判所の意見

続いて、弁護団が強盗殺人以外の公訴事実について実体審理に入らず免訴判決をすべきであるとしたことに対し、裁判所からは、難しいとの感想が示されました。

 

ウ 証拠の取扱方について

次に証拠の取扱方についての協議に入りました。確定審の証拠の扱いについては、実務は「続審説」なので,弁論更新手続に準じてそのまま公判に使うことで異議はないとの検察官の意見が述べられ、裁判所は職権で採用する旨明らかにしました。

再審請求審で出された証拠について弁護団は、検察官も弁護人もお互いに同意するという前提で進めてほしいと要請をしました。

これに対し検察官は、公判が通常と同じ手続なので,それぞれが新たに証拠請求すべきものであるとの原則論を主張しました。ただし,すでに尋問を実施しているものについては相当性があると考えられるとの意見でした。そして弁護人の求める「迅速に手続を進めること」には協力し、無用に同じことで争うようなことはしないと明言しました。

 

エ 具体的な証拠調べ請求について

裁判所から、弁護人・検察官双方から証拠調べ請求がなされた段階で、お互いに同意不同意の意見を聞いたうえで,同意書面は調べることにしたいとの意向が示されました。弁護団はこれに対し、検察官としては同意する方向で検討されたい旨要請をしました。

 

オ 検察官の別途の立証

検察官は、立証は基本的には従来のもので行いたいとしながら,犯行に使用されたパンツのDNA鑑定を請求しようと考えているとの発言がなされました。

この検察官の発言に弁護団は驚愕しました。一体どのようにDNA鑑定をするのか、パンツの保管状況に問題はなかったのか、鑑定がそもそもできるのか、立証趣旨は何なのか等、問題があまりに多すぎるからです。

検察官は、被害者の身の回りにあったパンツに残された資料をDNA鑑定して、櫻井さん、杉山さんのDNAと一致するかを鑑定したいとのことです。

弁護人は、検察官は無用な争いはしないとの姿勢を示したのではなかったかとして、このようなDNA鑑定は再考し、撤回すべきであると要求しました。

なお、検察側に、東京高等検察庁の田辺泰弘検事が加わることになりました。彼は足利事件の担当検察官であり、DNA鑑定に関する詳しい知識を持っています。弁護団としては、DNA鑑定に関する研究と対応準備を直ちに行うことにしました。

 

カ 証拠開示

弁護団は先のとおり、証拠開示請求をしていました。検察官が、その一部の証拠開示に応じ、3種類計7点の証拠が開示されました(目撃者に関連する捜査報告メモのようなもので、検察官から各証拠の写しを受領しました。)。

 

キ 再審公判の具体的な審理の進め方について

裁判長から、裁判所が考えている手法が説明されました。

①   人定事項、本籍住居職業について,当初の起訴状と変更になったことがあれば疎明資料を付けて提出してほしい。

②   強盗殺人については起訴状朗読、罪状認否をして,弁護人の意見も聞く。冒頭陳述は弁護人も希望するなら行ってもらう方向で対処する。

③   証拠調べに入った場合、公判に準じて扱うとなると,職権で調べることになるが、その場合の要旨の告知はどこまでやるか検討してもらいたい。

④   また、再審請求審での証拠については,裁判所が第1次再審請求審で出された証拠も含めて証拠の一覧表を作り、弁護人・検察官に交付する。

 

ク 次回までの検討課題等

次回進行協議期日開催にあたり、裁判所から弁護団に対し、事前に証拠請求の予定を明らかにすること、検察官に対し同意の予定を明らかにすること、双方に対し証人尋問の必要性についても明らかにすることが要請されました。そのような進行を見据えつつ、再審請求審で提出された証拠の証拠請求について期日外で準備することになり、弁護団・検察官双方が協議をしつつ、5月21日までに双方から証拠請求を提出することになりました。同意不同意は、弁護団・検察官双方が協議をして,できる範囲で詰めておくことが要請され、正式には5月21日から2週間くらい経過した時点で同意不同意を最終的に明らかにすることになりました。

次回の進行協議は6月11日午後3時00分から、次々回は、7月9日午後1時30分からと指定されました。次々回については、進行の状況次第で、公判期日に切り替えることもありうることになりました。

 

5,        裁判体の変更の可能性

概ね上記のような協議が行われましたが、裁判体のうち、裁判長と陪席裁判官の1人が異動予定で、4月には新たな裁判官が着任すると聞いています。新しい裁判官の考え方次第で、進行等が変更になる可能性も捨てきれませんが、弁護団としてはあらゆる事態を想定して事前準備を尽くしていきたいと考えています。

 

6,        最後に

事前の予想に反し、進行についての協議は順調に進みました。今後は確定審、請求審(第1次、第2次)で提出された証拠の取調べの手法等をめぐり検察官と意見を闘わせ、迅速な審理の実現に全力を投入することになります。

42年余というあまりに長すぎる冤罪との闘いに早く終止符を打ち、一日も早い雪冤の日を迎えることができるよう、弁護団としては更に努力を重ねていきます。