足利事件の再審公判の第4回及び第5回公判期日が2010年1月21日(木)、22日(金)両日に宇都宮地方裁判所で連続して開かれました。
(第4回公判期日)
第4回公判期日は2010年1月21日午前10時から開かれ、検察官が足利事件で菅家さんを起訴した後に菅家さんを取り調べた14回のうち、最初の2回を除き、取調べ状況を録音した12回分のテープで足利事件に言及しているものとして証拠採用された取調べ4回分の4本のうち3本が再生され取り調べられました。
1、 午前
冒頭、裁判長が、「本日の証拠調べに入るにあたって、証拠開示された録音テープ、謄写物について当事者間で生じている問題について、裁判所の見解を述べておくこととします。訴訟記録についての扱い、刑訴法上、終結後は確定記録としての閲覧になること、281条の4の目的外使用の禁止の規定に鑑み、弁護人の第三者への開示は281条の4に反するので、差し控えられるよう再考されたい」と述べ、その後、証拠調べに入りました。
⑴ 1992年(平成4年)1月28日の取調べ分(2時間13分)
菅家さんは、余罪として1979年(昭和54年)8月に発生した万弥ちゃん事件と1986年(昭和61年)3月に発生した有美ちゃん事件について取調べを受けていました。この日は主に有美ちゃん事件について取調べに来ましたが、それについて菅家さんは「本当のところはやってないです」と否認します。その過程で足利事件について問われ、ずっと「沈黙」する状況が続きます。その部分です。
検察官「・・・一番最初のね・・・最初に捕まったときの、あの真実ちゃんの事件は、それはそのとおりなの?・・・・おととしになるかな?」
菅 家「はい」
検察官「・・・パチンコ屋だけどね。駐車場からいなくなったっていう、あの事件は?」
菅 家「・・・・・」
検察官「間違いないの?」
菅 家「・・・・・」
検察官「うん?間違いない?それは」
菅 家「・・・・・」
検察官「どうしたの?」
菅 家「・・・・・」
検察官「うん、どうしたの、それは間違いないの?」
菅 家「・・・・・」
検察官「うん。あのね、(聞き取れず)な気持を起さないで欲しい、正直に話してもらいたいと思うんだけども。ね。」
菅 家「はい」
検察官「正直に話してもらうだけでいいの」
菅 家「はい」
検察官「僕は、君からどんな返事を聞かれようがね」
菅 家「はい」
検察官「驚くつもりはないし」
菅 家「はい」
検察官「うん?」
菅 家「・・・・・」
検察官「真実ちゃん自体は間違いないのか?」
菅 家「はい」
検察官「そういうことか。有美ちゃん事件は違うのか?ね」
菅 家「・・・・・・」
その後は、足利事件についてなぜ沈黙したかも問われないまま、有美ちゃん事件の取調べに終始します。弁護人は、この状況は菅家さんが否認寸前だった「実質的否認」と主張しています。
有美ちゃん事件について、検察官は、この後「違うと言うならなぜ前にこう自白したのか」と問い詰めていきます。結局、菅家さんは否認を撤回してしまいます。
弁護人は理詰めで追い込んで行くのだと主張しています。その触りは次のようなものです。
検察官「あらためてもう一回聞くけどね」
菅 家「はい」
検察官「有美ちゃん事件って言うのは」
菅 家「はい」
検察官「君がやったの?やってないの?本当のところはどうなの?」
菅 家「(聞き取れず)やってません」
検察官「やっていない」
菅 家「はい」
検察官「で、もう一回だけ聞くけど、真実ちゃんの事件は、やったの?」
菅 家「(不明)」
検察官「ふ~ん。そしたらね。有美ちゃんの事件ね」
菅 家「はい」
検察官「やってないのに、やったと警察で話したのは、理由はなぜだろう?怖かった?警察」
菅 家「・・・すみません。ごめんなさい」
検察官「うん?どうしたんだ?」
菅 家「・・・・・」
検察官「やっぱり。やったのか、君が。うん?」
菅 家「う~~~~(泣き声)」
検察官「やっぱりそう。有美ちゃんの事件やったの?そうだね」
このテープの再生中、午前10時50分過ぎころ、菅家さんは突然体調が優れないと訴え、約20分間休廷しました。菅家さんは、以前から自分が自白したテープを聞くことは苦痛だと述べており、公判前から食欲がない状態が続いていました。この時それが最高潮に達したのだと思います。
休廷後、菅家さんは気力を振り絞りテープの再生に立ち向かいました。
⑵ 1992年(平成4年)2月7日分(2時間1分)
余罪2件について話を聞きに来たことになっています。検察官は、この取調べで、菅家さんの供述の変遷の合理性を確かめようとしています。検察官は、正直に話すようになったのはどういう理由からか?としきりに問うています。しかしその前に、検察官は自分の意向を伝えています。すなわち「これだけの重大な事件なんだからね」「一つ一つの事件が重大な事件だから。ね、やっぱり、ね、自分のその命をかけて、こう、反省するんだと」「ね、自分の命で償うんだというくらいの覚悟でね、いろいろ話してもらいたいし」などです。そのやり取りの中で、菅家さんがどの事件も当初否認をしていたことが確認できます。検察官は、足利事件にも触れ、悔い改めて自白したという答えに誘導しようとしますが、話が噛み合いません。菅家さんは事実上の否認をしているといえます。
検察官「うん、最初、真実ちゃんの事件でね」
菅 家「はい」
検察官「いろいろ事情聞かれて、なんか、夜になってやっと認めたみたいだね」
菅 家「はい」
検察官「うん、あの時はやっぱり怖くて言えなかったのか?」
菅 家「はい、そうです」
(中略)
検察官「まあ、刑務所から出られなくなるってことも、そういうあれがさ、ね、そんな関わり合いでなかなかこう真実ちゃんの事件ね、話せなかったんでしょう、ね、最後はどこで話したの?」
菅 家「最後ですか?」
検察官「う~ん、それ、夜になって認めたでしょう?」
菅 家「あの、初めはやはり、初めになるんですけど、警察行ったときに警察の人に証拠があるとか言われたんですけども、自分はその、現場ですか、その現場には行ってないって、ずーっと」
検察官「言ってたね」
菅 家「はい」
検察官「だから、証拠があるなんていうだけじゃね、なかなか、まだあの、認める気にはなれなかったんだよね」
菅 家「はい」
検察官「夜になってね、君の気持はどう変わったのかな?」
菅 家「はい」
検察官「そんな刑罰受けなくても済むっていう気持ちになっちゃったのか?そうじゃないんだね?」
菅 家「そうじゃないんです」
検察官「うん、どうしてだろうか、どんな気持ちになったんだろうか?」
菅 家「うーん、自分は」
検察官「つまりね、この打ち明けようっていう気持ちになった時の気持ちね、そのへんはどんな気持ちだったんだろうか?」
菅 家「認めるってなったときは、何て言うんですか、やはり警察、警察は、その、人に(聞き取れず)が強いですから、みんなが自分、その、勢いに負けたって感じなんですかね」
その他、余罪については、目撃供述との整合性などについて確認する明らかな「誘導尋問」をしていますが、菅家さんはそれに反する答えをしたり、直ぐに誘導に乗ったり、「そこは分かりません」と言ったり、検察官への受け答えからも菅家さんの供述がかなり変遷していることが分かります。何よりも、関与したと疑われる3件の事件について、菅家さんが自転車で女の子を誘い悪戯して殺害するという犯行態様の説明がパターン化され、足利事件と混同していると見られる所が随所に出て来ます。このことは検察官も自覚しています。
⑶ 1992年(平成4)年12月7日分(2時間2分)
菅家さんが足利事件を「否認」する状況が録音されています。菅家さんが検察官に対し明確に否認したことが、記録上初めて明らかになったものです。その場面、
検察官「うんと、分かるね。今裁判になっているのは真実ちゃんの事件ね。一昨年の5月の事件ね。で、その前にね、万弥ちゃんの事件と有美ちゃんの事件があったわけだよね。万弥ちゃんの事件はもう13年くらい前に、うん、もう13年経っちゃたんだよね。で、有美ちゃんの事件っていうのはもう8年前になるわけ。ね、今日ぼくがここに来たのはね」
菅 家「はい」
検察官「君の捜査がさ、今までね「私がやりました」というね、調書とっているでしょ。そのことについてね、もう一回くらい聞こうかなと思ってね。本当に君がやったかどうかそこを聞きたいわけ。ね、ぼくは本当のことが知りたくてね。本当に君がやったのか、もう一回確かめたくて来たわけ。だから今までね、こういうことを言っていた、ああいうことを言っていたということにこだわらないで、今日はもう自由な気持ちで、楽な気持ちで話してもらいたいと、こう思っているわけ。ね。本当にやったのなら本当にやったと言ってかまわないし、やっていないならやっていないで構わないし。どちらでもいいんだけども」
菅 家「・・・・本当言うと」
検察官「うん」
菅 家「いいですか?」
検察官「いいよ」
菅 家「やってません」
検察官「やっていないの?どちらも?それとも片方だけ?」
菅 家「どちらもです」
検察官「どちらもやっていない?」
菅 家「はい。・・・自分が」
検察官「うん」
菅 家「警察ですか。昨年ですけども、確か12月でした。12月の確か日曜日でした。その時、警察の人が来まして、自分は福居の和泉町ですか、あそこにいました」
検察官「え?福居の?」
菅 家「福居の和泉町ですか、福居の和泉町に日曜日の朝居まして、それで自分は寝間着姿ですか、寝間着姿でいまして、で、玄関から入って来まして、警察の人が。自分は寝間着姿でいました」
検察官「うん、それで、うん」
菅 家「警察の人が来て、今日何しに来たか分かっているな、と言われたんです」「それで自分、分かんなかったんです」「自分も何が何だか分かんなくて」「首をかしげたんですよね」「何が何だか分かんなくて」「何が何だか分からなくて、何だろうかなと思ったんです」「何しに来たか分かっているな、と言われましたから、それで自分は分かんなかったんです」。
(中略)
検察官「あのね、万弥ちゃんの事件と、その後が有美ちゃんの事件と、そしてその後の真実ちゃんの事件と3つの事件があるんだけど、この事件で、もう、ちょっと結論から聞くけどね、君がどの事件に関わっていて、どの事件に関わっていないか」
菅 家「話していいですか?」
検察官「あー」
菅 家「全然関わっていません」
検察官「全然関わっていない?」
菅 家「はい。絶対言えます」
この後、検察官は「ではなぜ自白したのか、なぜこう話したのか」と理由を聞いて行きます。菅家さんは堰を切ったように懸命に説明しています。曰く「警察へ行って調べして、今さっき言ったように夜遅くまで調べられまして、・・・自分はやっていないやっていないと言っていたんですよ」「でも全然認めてくれないんですよ。自分はもう悔しくなっちゃんたんですよ。本当にやっていなかったのに」「本当にやっていなかったんですよ。それで全然認めてくれなくて。それで夜遅くなってしまったんですよ。それで何と言うんですか、夜遅くなりましたから、これ以上10日も20日もやっていない、やっていないというと、殴る蹴るとかされるんじゃないかと自分は恐怖が」「自分でもそうやってやったか分からないんですよ。それで、まぁ適当なと言ったら悪いんですけども、そういうふうに話したんです」「自分では本当分からなくなっちゃったんですよ」「分かんなくって」「何でですか?分かんないです。本当、分からないです」「なんでだろう。分かんなくなっちゃった。本当にもう」「やはり何て言うんですか、怖いような気がしたからです」「やはり、まー、何ですけれども。・・・・殴るとか」「認めたっていいますか。全然行ってません」「ちょっと覚えていない」「分かんないです」と繰り返し繰り返し訴えている。
同時に事件当日の行動について懸命な説明がなされています。それは誰に対するかを問わず、全く同一の一貫した説明であることが分かります。
このテープで再生された中で、「極めて象徴的な場面」を紹介します。森川検事が菅家さんに自分は強制的な取調べをしていないのにどうして自白したのかと問うていくところです。
検察官「・・・福島先生(注・精神鑑定をした福島章上智大学教授(当時)のこと)と話をした時があってね、君、認めていたと思うんだよね。真実ちゃんの事件は。なぜそうなんだろうか。警察が怖いとか、殴られるかも知れないと、そういったところで、ぼくは怒鳴ったりしたこと一度もないと思ってはいるんだけどね」
菅 家「はい」
検察官「大きな声をあげてこともないと思っているんだけどね」
菅 家「はい。ありません」
検察官「やはり怖かったかな?」
菅 家「なんか怖かったときがありました」
(中略)
菅 家「なんか、きらっと怖い顔になったことがありましたから」
検察官「怖い顔になったって?例えばどんなとき?」
菅 家「調べで、調べられるときですけど、何か怖い感じがしました」
(中略)
菅 家「その時、自分は怖くなっちゃったです」
(中略)
菅 家「それでなんか怖い感じになりまして」
検察官「うん、で、何か言われた?そこから?」
菅 家「君はずるいよと言われました」
検察官「えっ?」
菅 家「君はずるいよと言われました」
検察官「そうか」
菅 家「言われました。覚えています」
(略)
(第5回公判期日)
第5回公判期日は翌1月22日午前10時からの午前中に残りの取調べ1回分の1本が再生され取り調べられ、午後1時から菅家さんを起訴し、起訴後も取調べをしつつ公判立会した森川大司(だいじ)元検事の証人尋問が行われました。
1、 午前10時~11時25分
1992年(平成4)年12月8日分(1時間25分)
長い雑談の後、森川検察官が「ところで前にね、君からちょっと変なことを聞いたんでね。今日来たんだけれども」と水を向けます。
菅 家「はい」
検察官「今、起訴している、ね、真実ちゃんの事件」
菅 家「はい」
検察官「あれは、君がやったことに間違いないんじゃないかな」
菅 家「違います」
検察官「ええ?」
菅 家「違います」
検察官「違う?」
菅 家「はい」
検察官「ふ~ん」
菅 家「それで、なんか、いいですか?」
検察官「うん」
菅 家「鑑定ですか」
検察官「うん」
菅 家「自分にはよくわかんないですけど、なに鑑定っていいましたっけ?」
検察官「DNA鑑定」
菅 家「そんなこと聞いたんですけど、でも自分じゃそれ全然覚えないんですよ」
検察官「だけど、DNA鑑定でね、君とね、君の体液と一致する体液があるんだよ」
菅 家「全然それ、分かんないんですよ。本当に」
検察官「・・え?」
菅 家「絶対、違うんです」
検察官「違うんですって言ったってさ。え?君と同じ精液持ってる人が何人いると思ってんの?」
菅 家「・・・・」
(中略)
検察官「いろんな意味で一致してるんだけどね」
菅 家「・・・・・」
検察官「じゃあ今までね、認めてたのがね、何で最近になって急に否定する気持になったの?」
菅 家「・・・・・」
検察官「ぼくはずるくなれと言ったわけじゃないんだよ?ん?」
菅 家「・・・・・」
検察官「ずるくなれと言ったわけじゃないんだよ」
菅 家「・・・・・」
検察官「少なくともね、起訴しているあおの真実ちゃんの事件については、君が認めたから起訴したっていうわけじゃないんだよ?おれだけのことじゃないんだよ?わかる?」
菅 家「・・・」
検察官「君が認めたということだけじゃなくて、ほかに証拠があるからだよ?」
菅 家「・・・・」
検察官「どうなんだい。ずるいじゃないか、君」
菅 家「・・・・・」
検察官「何でぼくの目を見て言わないの、そういうこと。さっきから君はぼくの目を一度も見てないよ?」
菅 家「・・・・・・(涙ぐむ)」
検察官「うん?」
菅 家「・・・・・・・(涙声で)ごめんなさい。すみません」
検察官「ウソだったの?」
菅 家「・・・・(すすり泣き)」
検察官「そうだね?」
菅家「(涙声で)ごめんなさい。勘弁してください。勘弁してくださいよお」
検察官「いいから」
菅 家「(泣き出し)勘弁してくださいよお」
検察官「うん」
菅 家「(泣きながら)・・・(涙声で)すいません(洟をすする)」
検察官「ぼくはね、本当のことを聞きたいって何回も言うよぼくは」
菅家「(涙声)はい」
検察官「ね。分かんないこともいっぱいあるから」
菅 家「(涙声で)はい、すみません」
検察官「それは言う。言うけどね、ウソをつけってことじゃないんだよ、ぼくは」
菅 家「はい(洟をすする)」
検察官「で、ぼくに、ぼくはね、別にウソついたから怒るとか、そういうことじゃないけれども、ただ、本当にね、ね。そのお、何て言うかな、人を殺めたんだったらね。そのことを本当に反省してもらいたいと思うわけ」
菅家「はい」
検察官「ね。殺めてないんだったらさ、そんなことを認める必要はないわけで」
菅 家「・・・」
(中略)
菅 家「・・・・・(涙交じりの声で)すみません・・」
検察官「間違いないんだな?ん?真実ちゃんの事件は間違いないんだね?」
菅 家「はい」
検察官「やったの?」
菅 家「あとは知りませんけど」
検察官「真実ちゃんのは間違いない?」
菅 家「はい。すみません」
(中略)
検察官「きのうのあれは、真実ちゃんのあれ、も、ウソを言ったということで間違いないんだね」
菅 家「はい、すいません。ごめんなさい。取り消して下さい、きのうのは」
検察官「うん、いいよそれは。気にしないでいいから」
菅 家「はい、ありがとうございます」
菅家さんは「すみません。勘弁して下さい。勘弁して下さいよお」とまさに「落とされる」場面で身体をこわばらせ、机の下を蹴飛ばしました。
2、午後1時~
足利事件の主任検察官で、菅家さんを取調べ起訴し、起訴後の取調べをしながら第一審公判に立会した森川大司元検事の証人尋問が行われました。菅家さんにとっては第一審の判決公判期日である1993年(平成5年)7月11日以来の再会でした。
⑴ 冒頭、まず菅家さんが自ら尋問に立ち、次のとおり質しました。
森川さん、私は17年半もの長い間無実の罪で捕まっていました。あなたは、このことをどう思いますか。
私は、当時主任検事として、証拠を検討し、その結果、菅家氏が、真実ちゃん殺害事件の犯人と間違いないと起訴し、公判に臨んだわけですが、今回、新たにDNA鑑定で、犯人ではないと分かって、非常に深刻に思っているところです。
森川さん、拘置所での取り調べのとき、私は、やっていないと正直に話しました。それなのにどうして、弁護士や裁判所に伝えなかったのですか。
拘置所であなたを調べたのは、真実ちゃんというより、起訴されていない余罪2件、万弥ちゃん事件、有美ちゃん事件、そのことについて取調べをしたものでありまして、その中の、取調べの行き先のなかで、真実ちゃんのことがあったとしても余罪の調べをしたものである。あなたに問い糾したことありますが、あなたの真意を確かめたもので、あくまで余罪を調べたもので、余罪についてどういう調べをするかは検察官の裁量と考えている。逐一報告する必要はないと考えていました。
森川さん自分に無実の罪を着せたことについて謝って下さい。
先程のとおり、証拠を見て、あなたを犯人と認める状況でした。それを疑う要素はなかった、その後に、新たな証拠が出たもので、私も深刻に、厳粛に受け止めているところであります。
森川さん、私の家族にも謝って下さい。苦しんでいる
いま申し上げたとおりです、
大変なことですよ、苦しんでいるのです。どう思います
いま申し上げたとおりです。
森川さん、あなたは反省してないのではないですか。
山口検察官:裁判長、立証趣旨との関係で質問の趣旨が分かりません。
菅家:あなたは黙っていて下さいよ、関係ないでしょ!森川さん、反省してないんですか?
裁判長:(両者を制止し)質問を認めます。反省をしていないのですか?という質問です。答えて下さい。
いま申したとおりです。
菅家:あなたは、私のことを人間性が無いといった、人間性が無いのはあなたの方ではないですか。
・・・
私は怒っています、何とか言って下さい。
私は、あなたに、人間性無いといったことはないと思うが、・・
言ったから言っているんです!
・・・
山口検察官:裁判長、何度もいいますが質問の趣旨が~
ここで菅家さんは怒りをこらえて尋問を終え、弁護人らにバトンタッチしました。
⑵ 以後のやり取りのポイントは次のとおりです(裁判所の補充尋問も含む。なお検察官は尋問をしなかった。)
① 自分の直接の上司であった次席検事から本件の主任検察官を命じられ、送検後の弁解録取段階から関与した。
② 次席検事が、DNA型鑑定は初めてであり1000人に1、2人という出現頻度からも任意で呼んで取調べ、自白を得てから逮捕するという趣旨に近いことを述べていたことは聞いたことがある。だから、その方針を決定したのは自分ではない。
③ 弁護人がDNA型鑑定を争うことを決めた後、もともと②のような方針だったなどと上司に報告する文書を自分は作成していない。
④ 菅家氏は、おとなしく、強く言うと反論できないおどおどした感じの人だと思っていた。
⑤ DNA型鑑定書だけで認定したわけではなく、犯人かどうかは総合判断だが、DNA鑑定は有力な証拠だと思っていた。
⑥ 別件余罪の自白は虚偽だと思っていない。万弥ちゃん事件では時間が経ち過ぎ、有美ちゃん事件では証拠が薄く、補充捜査を遂げられなかったので自白の真偽を判断しようがなかっただけだ。不起訴の結論は嫌疑不十分だ。
⑦ 起訴後の取調べはあくまで余罪の取調べだ。ただし関連する限り足利事件についても質問するつもりだった。
⑧ 今回のテープ録音は、取調べの妨げにはなっていない。だから取調べを進めた。
⑨ テープ録音は私の独断で行い、上司の指示や判断は仰いでいない。テープは私費で購入し、レコーダーは私物だ。取調べの結果は概括的にだが上司に報告していると思う。
⑩ テープに録音されていること、第一審の被告人質問での質問、論告などは記録がそうならそのとおりだと思う。虚偽自白に追い込んだとは思っていない。菅家氏は質問に答えて話しただけだ。
⑪ 結果として虚偽自白だったが、そうさせたことを反省していないかと言われても、その時々の証拠で判断しているので答えようがない。
⑫ 12月7日の取調べで、余罪2件はともかく足利事件も否認したことは意外だった。少なくとも、足利事件に関する菅家氏の否認は当時の証拠関係に照らし虚偽だと思っていたから、糺す必要があると考えていた。それで急遽12月8日も取り調べることにした。起訴していたことは取調べの動機ではない。
⑬ テープに入っていないなら、黙秘権の告知、任意取り調べでいつでも退去可能であるとの説明などは行っていないと思う。
⑭ 第一審までの当時、菅家氏が無実ではないかと思ったことはない。現在は、再審事件の証拠関係を知らないので何とも言えない。
⑮ 本件について反省すべきこと、こうすべきだったことについて、現在、最高検で検証作業中と聞いているので個人の意見、感想は差し控える。
(3)最後に再び菅家さんの質問。
私は昨日と今日、本当につらい思いをしました。私と両親、きょうだいに謝る気はまだありませんか?
先程申し上げたとおりです。
森川さん、私と森川さんの立場を逆にして考えて下さい。謝って下さい。お願いします!
・・・先程から申し上げているとおりです。
◆次回、第6回公判期日は2010年2月12日午前10時から開かれ、弁護側がDNA鑑定関係の証拠請求をして裁判所が採否を決定した後、証拠調べを終え、検察官の論告と弁護側の最終弁論、菅家さんの最終陳述が行われ、終結する予定です。
検察官の論告に要する時間は「ごくわずか」とのことです。これまでの主張から見て、検察官は、DNA型鑑定の証拠能力はあり、自白にも任意性があるから再審前の確定審の結果には間違いはなく、今回の(本田克也教授ではなく鈴木廣一教授による)DNA再鑑定結果によって初めて菅家氏の無実が判明した、として無罪の論告をすることが確実です。
弁護人の最終弁論は2時間半程度となる見込みです。弁護側は、①科警研のDNA型鑑定は証拠能力・証明力ともに認められないから証拠から排除され、かつ②公判廷の自白はテープ録音した際の違法な起訴後の取調べの影響によりに任意性を欠くから証拠から排除され、よって菅家さんを有罪とする証拠はなくなったから無罪(無実)である、と最終弁論をする見通しです。
以上