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-速報-足利事件第1回公判期日前の三者協議が行われました。(09.8.7)

足利事件再審裁判に関して、2009年8月7日宇都宮地方裁判所で第1回公判期日前の三者協議が行われました。

 

1,この三者協議は、刑事訴訟規則第178条の10にもとづいて、裁判所が適当と認めるときは、第1回公判期日前に、公判期日の指定やその他訴訟の進行について、打ち合わせを行うために開かれます。

2,この協議の出席者は、佐藤正信裁判長他裁判官2名及び担当書記官、山口幹生宇都宮地検事務取扱検事(東京高検検事)他検事1名、佐藤博史主任弁護人他弁護人12名。菅家利和さんも出席しました。 弁護人は、「再審公判の審理に関する意見書」及び「期日間整理手続に付する旨の決定を求める申立書」を提出しました。

3,弁護人は、この協議の冒頭において、裁判長に対して菅家さんに謝罪することを求めましたが、裁判長は自分は裁判所を代表しているわけでもないし、この手続は進行の打ち合わせの手続なので、謝罪は容赦されたいと述べ、謝罪要求には応じませんでした。

4,再審公判の審理について、裁判長から、弁護人は「公判手続の更新説」(注1)に立っているが、検察官はどうかと尋ねたところ、山口検事は「覆審説」(注2)に立つと答えました。これに対して裁判長は再審公判は「公判手続の更新説」で行うと述べました。

5,次いで、弁護人は、本件を「期日間整理手続(注3)に付する」ことを主張しました

1)弁護人は、その理由を次のように説明しました。 

 本件再審公判の争点は、①菅家さんの自白の任意性及び信用性、②科警研のDNA鑑定の証拠能力及び証拠価値である。 ところが、検察官は、弁護人からの①、②に関連する証拠の証拠開示についていずれも拒み、弁護人と見解を異にしている。そこで、公判開始前に、争点及び証拠の整理をする必要がある。そのためには、刑事訴訟法316条の28に規定する「第1回公判期日後に、事件の争点及び証拠を整理するための公判準備として、期日間整理手続に付する」べきである。

2)検察官は、「争点は存在しないから、不必要」と述べました。

3)裁判長は、「審理の経過を見て決めたいから、公判期日を決めたい。」と述べました。

4)弁護人は、繰り返し「期日間整理手続に付すること」を求めましたが、裁判長は「その点をさておいて、ともかく3回程度の公判期日を決めたい。」との態度を固持しました。

5)結局、弁護人の求めた「期日間整理手続」については、裁判長はその決定をしないまま、次回三者協議の打ち合わせを行うこととしました。

6,次回三者協議は、9月4日15時30分から宇都宮地裁で行われることになりました。

7,弁護団は、裁判所は本件の誤判原因の究明及びその責任の所在についての審理を避けて、早期結審を目論んでいるのではないか、との疑念を表明しています。

8,多くの人が、宇都宮地方裁判所は本件の誤判原因の究明やその責任の所在について実質的な審理を行うか否か、次回の三者協議がどうなるか、を注目しています。

(注1)公判手続の更新説とは、再審裁判において原確定判決の基礎となった証拠はすべて再審裁判所の職権で取り調べたうえ、再審請求段階以後の証拠については当事者の証拠調べ請求を受け、裁判所が証拠の採否を決め、証拠調べを行うとする見解。過去の再審公判の多くはこの見解に基づいて行われ、実務では支配的な見解。この見解に立てば、裁判所の訴訟の進め方次第で、原確定審の証拠の収集・作成過程や判断過程の当否が審理の対象となり、誤判原因の究明や責任の所在を明らかにすることができます。しかし、裁判所が誤判原因の究明等を避けようとするならば、原確定審の有罪証拠を形式上は証拠調べし、誤判原因等については実質的な審理をしないままで結審することも可能です。従って問題は、公判手続の更新説に立ったうえで、裁判所自らが、誤判原因の究明とその責任の所在を明らかにしようとする審理を行うか否かです。

(注2)覆審説とは、再審裁判は原確定審の訴訟手続とは全く別個の手続とし、再審裁判では原確定有罪判決の証拠を取り調べるか否かは裁判所の裁量によるとする見解。この見解では、検察官が原確定審の有罪証拠である科警研のDNA鑑定や菅家さんの自白調書などを、再審裁判では請求せず、裁判所もこれを証拠調べをせずに結審して、一件落着とすることができます。この見解に立てば、再審裁判において、誤判原因の究明やその責任の所在は全く審理されずに終わる危険があります。

(注3)期日間整理手続とは、刑事訴訟法316条の28に規定されている手続で、第1回公判期日後、公判期日の間において、公判準備として、争点及び証拠の整理するために行う手続。審理を円滑効率的にし、充実させることを目的としています。