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誤判を防ぐための8つのお願い

裁判員に選ばれた方は、裁判に関心のある方は、誤判を防ぐため、ぜひご覧ください。

国民の皆さま、裁判員になられる皆さま-

           誤判を防ぐための8つのお願い

                   死刑再審4事件元弁護人有志のアピール

 

 私たちは、免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件という死刑確定事件の再審裁判の弁護人でした。

死刑台からの生還

これらの事件の4名の死刑囚は、第1審で死刑判決を受けた後、約30年間獄

中で死刑執行の恐怖に向き合いながら、再審裁判を闘いました。その結果、無実(罪を犯していないこと)が明らかになり、無罪判決を受け釈放されました。

誤判(冤罪)の原因は何か

  これらの事件で、誤った裁判が行われた原因には、共通点があります。

1 警察官や検察官が、被告人を長期に勾留したり、長時間の取り調べを行ったり、様々な方法で自白を強要し、ついに自分が犯人であることを認める「虚偽の自白」に追い込みました。

2 さらに、検察官は「誤った鑑定」を裁判に提出しました。

3 加えて、警察や検察官は、被告人の無罪を裏付ける被告人に有利な証拠を隠して、裁判には出しませんでした。

4 裁判所は、このような「虚偽の自白」や「誤った鑑定」を信用し、法廷での「私は犯人ではありません。」という被告人の叫びを信用せず、死刑判決を下しました。

 

これらは、過去の、昔のことではなく、例えば、氷見事件(富山県)、志布志事件(鹿児島県)、足利事件(栃木県)など多くの事件において、捜査、起訴、裁判で、今でも同じような誤りを犯しています。

誤判は絶対にあってはならないことです。

 

裁判員の皆さまへのお願い

裁判員裁判においては、このような誤った裁判を防ぐために、以下の点に配慮され、審理と評議に臨んでくださるよう、お願いします。

 

1 「被告人は無罪」という推定の下に裁判を

   被告人は、有罪の判決が確定するまでは、「罪を犯していない人」として扱われなければなりません(無罪推定の原則)。この原則は国際的に確立し、憲法でも保障されています。

   テレビ・新聞・週刊誌などの報道があっても、皆さまは、「被告人は無罪である」という前提で裁判に臨んで下さい。

 

2  検察官に有罪の立証責任があります

   その犯罪が確実に被告人によって行われたことを、証拠によって証明する責任は、検察官にあります。

   皆さまは、検察官の主張と証拠を見て、「間違いなく有罪といえるか」、「確実に犯人であると言えるか」を判断してください。 市民の目から見ても間違いないといえるのか、それを判断するのが裁判員の役割です。被告人が有罪とは言えない場合、誰が真犯人か、真実は何かを追求することは、皆さまの任務ではありません。

 

3  有罪の確信が持てなければ「無罪」

    もし、被告人が有罪らしく見える証拠があったとしても、皆さまの経験や知識から考えて、犯人でない可能性が残る場合には、それは「確実に犯人である」とは言えません。

   そのような場合は「有罪ではない」、すなわち「無罪」とするのが、刑事裁判の鉄則です。被告人・弁護人が、無罪であることを証明する責任はありません。

 

4 違法な捜査や信用できない証拠には“No!”を

   捜査は、法律で定めた厳格な手続きに従って行わなければなりません。これに違反して集めた証拠を裁判に出すことは許されません。そのような証拠は裁判を誤らせることになるからです(違法収集証拠排除の原則)。

   そのことを弁護人が主張することがあります。また、手続上は問題がなくても、いろいろな観点から信用できない、と弁護人が指摘することもあります。有罪の証拠として扱うことに疑問はないか、その証拠は信用できるかなど、皆さまの経験や知識をもとに評議で意見を述べてください。

 

5  取調べは適正であったかを確認しましょう

   被告人が、捜査の段階で犯人であることを認める自白調書に署名したが、裁判になって否認することがあります。その場合、検察官が、自白調書を作っている場面やその後の場面だけの録画や録音を証拠として出すことがあります。

   しかしそれでは、自白に至るまでにどのような取調べを受けたのか分かりません。場合によっては、自白の強要など、裁判員には見せたくないことがあったかもしれません。

取調べの一部の録画・録音しか出されず、取調べの全てが適正であったことを確認できないときは、その“自白”には疑問を持ち、その疑問が晴れないときは、信用できないと判断しましょう。

 

6  鑑定は適正であることを確認できましたか

   DNA鑑定を含む法医学の鑑定書やその他の鑑定書、実験結果などが提出され、鑑定人が証言することがあります。わかりやすい説明が試みられるはずですから、専門知識がないからとひるまないでください。

   わからないことは法廷で鑑定人に質問し、鑑定結果をよく理解するよう努めてください。

同時に、鑑定資料の入手・保管・鑑定人の選任・鑑定や実験の方法・鑑定(検査)技術・推論・再鑑定のための資料の保存などが、適正に行われているかどうかを十分に確認した上で、その鑑定結果が信用できるかどうかを判断してください。

 

7  有罪・無罪の判断は被害者の心情とは離れて

   裁判に、被害者やその遺族が参加されることがあります。その心情はくみ取っていただくべきですが、有罪・無罪の判断はこれを離れて、法廷に出された証拠から判断してください。

 

8 論告・最終弁論に耳を傾けてください

   全ての審理が終わった後で、検察官は論告として、弁護人は弁論として、最終的な主張を述べます。

   その裁判において調べるべき十分な証拠が出されたか、被告人に有利な証拠が未提出ではないか、排除すべき証拠はなかったか、証拠が信用できるか否か、その理由は何かなど、皆さまの判断の手がかりになることです。弁護人の弁論には、特に耳を傾けてください。

   裁判全体を通じて、少しでも気にかかること、疑問に思うことがありましたら、評議で率直に話しましょう。死刑再審4事件等においても、何気ない疑問や質問から思いがけない事実や問題点が出てきました。それは、有罪・無罪の判断に大きな影響をもたらしました。

 

誤判を繰り返さないために、国民の皆さまに、裁判員になられる皆さまに、死刑再審4事件を担当した私たち弁護人は、心からお願いします。

2009年(平成21年)6月22日

死刑再審4事件元弁護人有志(順不同)

 免田事件

  眞部 勉(第一東京弁護士会) 古原進(長崎県弁護士会)

 

 財田川事件

  岡田忠典(大阪弁護士会)   古髙健司(兵庫県弁護士会)

   上野登子(第二東京弁護士会) 岡部保男(東京弁護士会)

   猪崎武典(香川県弁護士会)   嶋田幸信(香川県弁護士会)

 

 松山事件

   青木正芳(仙台弁護士会)   犬飼健郎(仙台弁護士会)

  佐川房子(仙台弁護士会       阿部泰雄(仙台弁護士会)

   西口 徹(東京弁護士会)      岡田正之(東京弁護士会)

  袴田 弘(仙台弁護士会)      髙橋 治(仙台弁護士会)

  佐藤正明(仙台弁護士会)      増田隆男(仙台弁護士会)

 

 島田事件

  大塚一男(東京弁護士会)   関原 勇(東京弁護士会)

  西嶋勝彦(東京弁護士会)      田中敏夫(東京弁護士会)

   今村敬二(第一東京弁護士会) 佐藤博史(第二東京弁護士会)

  市川 勝(静岡県弁護士会)  河村正史(静岡県弁護士会)

  阿部浩基(静岡県弁護士会)  小倉 博(静岡県弁護士会)

   藤森克美(静岡県弁護士会)  黒栁安生(静岡県弁護士会)

  石田 享(静岡県弁護士会)    津留崎直美(大阪弁護士会)